5年ほど前に通っていた歯医者さんが少し変わっていました。先生はいつもにこやかで安心感を持たせてくれるような雰囲気でしたし、歯科助手さんも優しい口調でしたが、なぜか虫歯治療の際麻酔を一切しなかったのです。口を開けてくださいと言われ、麻酔のチクリとした痛みを覚悟していると『キュイーン』という音が聞こえ、え?と思った瞬間に虫歯とは比べものにならない痛みが走りました。あまりに自然に歯を削り出したので、『あ、ここは麻酔がない歯医者なんだ』と痛みに悶えながらもなぜかすんなり受け入れてしまいました。涙がポロポロ溢れると、『痛いよね、頑張って!』と言われました。本来なら頑張る必要は無いはずなのですが、私はなぜか『よし、頑張るぞ』と気合を入れ直したのです。しかし気合を入れ直したところで痛みが弱まる訳もなくむしろ益々痛くなり、神経の痛みとはここまで痛いものなのかと衝撃を受けました。先生の『終わったよー』の一言をどれだけの時間待ち望んだかわかりません。そこから4回は通ったのですが、一度も麻酔を打たれる事はなく治療は終了しました。なぜあの歯医者さんは麻酔を打たなかったのか、なぜ私は麻酔を打たずに治療する事を受け入れ、その歯医者さんに通っていたのか、なぜの答えが出ないまま奇妙な思い出として私の心に残りました。その後また虫歯になり職場の近くの歯医者に変えてみたのですが、やはり麻酔を打っての治療は最高でした。痛くないって素晴らしい!と心から感動し、最近では麻酔を刺すための表面麻酔までしてくれる歯医者さんが殆どになり、医療の進歩に感謝を捧げたいです。